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【語りの梗概】
武士松茂良が十六歳のときに、首里の武士で弟子をかかえている親方が、弟子を三名連れて、那覇の本願寺の前でな、そこは墓が三つ四つあり、辻町への登り口になっていて、そこで、酒が一升二合入る椰子と、八合はいる椰子と、六合入る椰子の三つに、いっぱい酒を入れて持って、自分が教えた弟子を三名連れて、ここを通る武士らしい人と、力試しをさせていたんだ。そんな首里の人が居ってな。それを、十六歳になっていた武士松茂良は、怖くはあったが、遠くでその様子を見ていたんだ。ところが首里の武士には、武士松茂良もまた同じ武士であることがわかるんだな。歩き方を見て、武を習っているかどうかが。それで、松茂良はその首里の人につかまえられて、「お前はできそうだから私の弟子たちとやってみろ」と言われたんで、武士松茂良は、「わかりません」と言ったって。でも、この師匠は強い人でいらっしゃるから、これはできると、見てのことだから許してはもらえないんだ。仕方なく、武士松茂良は、今日は自分は殺されるなあ、と思いながらも、「じゃあ、やります」と言って戦ったんだ。一人は目ん玉を手挙で突き、一人は墓に投げとばし、一人はその場にのばしたんだな。それで、この三人の弟子たちを倒して、墓の上やら、何やらを越えて、逃げたんだ。そして、辻町に飛び込んで、そこで夜を明かしてな。翌日は起きて、知らん顔で夕べ戦った所を通ってみると、まだ三人は、そこに居ったんだ。殴り倒されたまま一人は目を突かれてな、目がはれているし、一人はのびているしね、翌日の朝までそこにいたんだな。ひじょうに強者だったらしいよ、武士松茂良は。