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宜志富紹長さんの語り

謝名の三人兄弟の話(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

ところで、謝名の三人兄弟と言って、三男までいたらしいよ。すると、もう合点できないでしょう、親はむこうで、薩摩で殺されているから。それで、仇討ちに行くことを王府に願ったらしい。「兵隊三百人と、船とを借して下さい」と願ったんだ。そしたら薩摩は恐れているわけだ、まず。そうすると、(王府は)船も借さない、兵隊三百人も借さなかったって。それでもう、この謝名の兄弟は怒っているわけだ。それからはもう、今度はもう、王府に手向いする考えらしい。三人とも武土だからね。今度は琉球の、この王府に反抗するわけだよ。そしたら、もう武士なのでね、三人共、兄弟三人は。謝名の三人兄弟と戦えるのは、もう沖縄の武士には誰もいないわけだよ。

ところで、チングシク殿内という御方は、この謝名の兄弟と戦える腕を持っていらっしゃったそうだ。それで、チングシク親方に、いやチングシク殿内に「お前にしかできない、チングシク」と、この三人を倒すことを頼みにいらっしゃったそうだよ。それで、この三人に武術を教えた人は、坊主であったそうだ。この坊主、これが見ていてね試合をさせたそうだ、真剣勝負だよ。させると、長男から闘ってね、このチングシクと謝名の三人兄弟の長男が闘ったんだ。この試合を見ている坊主は、このチングシクにも教えているし、また謝名の三人兄弟にも教えている師匠だそうだよ。それで、この坊主は、あれだそうだ。長男と謝名の三人兄弟の長男とね、碁を打ちながらチングシクと兄弟を試合させてね。そうすると、三男がこのチングシクに負けてね。また今度は次男の番になって、次男も負けたのだが、長男はまだ坊主と、この師匠の坊主と碁を打っているそうだよ、自分の番が来る間は。そしたら、「はい、次はあなたの番になっていますが」とチングシクが言ったんだね。もう二人は、三男と次男は片付けてしまったのだから。「ん、これは簡単にはすまない」とみて、今度は長男が、「では」と言って、チングシクと闘ったそうだよ。

ところで、このチングシクは勝負に行かない前にだね、まだ首里の家から。チングシク殿内は、親と妻に白い着物を着せて身じたくさせてね。別れの盃を交わしながら、もう死の別れなったので、母親とも妻とも。それで、おいでになる時に、「私を追って来る者は、誰でもたたっ切るぞ」と言ったんだ。言わば、敵と見なすわけだ。それだけを念に押して出かけたんだ。「追って来るな」と言いつけたわけだ。ところで、首金(くびがね)というのがあったそうだよ。鎧用に被せたんだね、首金といって。これを忘れてしまったので、妻はもう「来るのはたたっ切るぞ」と言われていたが、夫が謝名兄弟にたたっ切られてもいけないので「おおい、おおい」と、すぐに追ったらしいよ。振り返って見ると、もう首金を持っているもんだから、これはもう「追って来るとたたっ切るぞ」と言ってはあるが、首金、鎧を持ってきているから、妻をたたっ切ることはしなかったそうだ。

そういうことがあって、この長男とこれが闘うわけだね。それで長男と闘うと、二人とも同じ腕前の人でね、もうどちらもわざを仕掛ける隙もなかった。二人は立ち合ったまま、もうほとほと、ほら、大変疲れているわけだ、言うなら。そしたら、節チングシクという、この武術の技があったそうだよ。手のここには節があるだろう。手の上には。これをチングシクは教わっていたんだな。節落とし、すぐ、そのままこうするのは、節落しという技らしいよ。「節、チングシク」と、この坊主が言ったら、すぐ、その言葉と同時に刀を下ろすとね、この二つの手を、謝名の長男はたたっ切られてしまったんだ。命はあるのだが、手をたたっ切られたんだ。

でも、(長男は)武士同士だから「私の太刀を、私のこの足に据え付けてくれ、チングシク」と言うので、付けたそうだよ。そしたら、付けると同時に、すぐこれに(長男に)やられたらしいよ。この足だけで、手は無いのだから。でも、いいぐあいに、首金を忘れたのを妻が追って来て、持たせて行かせたんで、チングシクの命はなかったはずなのに、助かったというんだな。もし、この妻から首金を受け取らなかったら、互いに死んでいたという話だよ。この謝名は両手をたたっ切られているだろう。だけど足で、今度はチングシクの喉に太刀を突いたんだな。チングシクが首金をはいていらっしゃらなかったら、ほら、チングシクも二人、一緒に死んでいたという話なんだ。

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