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【語りの梗概】
鄭迥(ていどう)という人は、この謝名鄭迥という人はね、薩摩に行ったんだ。この人、謝名鄭迥という人は、忍術を知っておられたそうだよ。琉球の王様と、あちらは、薩摩の王は島津だよな。二人のうち誰が徳があるかということで、互いに並んでにらみあいをしたんだ。にらみあいをして、先にまばたきをした方はもう徳がないという、その意味なんだね。それで、この勝負をする時に、謝名鄭迥という人が島津に忍術をかけたので、島津、薩摩の島津はね、額をすりつけるほどに御辞儀をしてしまったんだよ。それで沖縄の王が上だということであったらしい。あちらの島から、船に乗って沖縄に帰ろうとして、やがて港に着こうとするときに、薩摩がね、「こやつは忍術家だぞ」と言って、すぐ追って来て、呼び返してね、この謝名親方を、謝名鄭迥をね。そしたらもう、そこから呼び戻されて行く時に、国王様がね「ここまで来てから呼び戻されるとはな、用心しろよ、謝名」と、おっしゃったそうだ。もう殺されに行くようなものだから、「用心しろよ」と、おっしゃったそうだ。すると、この謝名の親方はね、小国に生まれて、と言うのは、小さい国に生まれて、というわけだ、沖縄は小さいだろう。「小国に生まれて大国で終るのは、武士として心残りでございます」と言って、行ったそうだ。ところでこの謝名親方を呼び戻しに来ているのは、二人であったそうだ。そして、あちらではすでに、大きな鍋に、油をたいそうたぎらせて待っていたらしいよ。まずこの油鍋に落として殺すわけだ。すると、この謝名親方は「ああ、私は死ぬんだな」と知っていらっしゃるわけだ、武士なのだから。それで、この鍋の所に行くとね、この二人にだよ、まず「さあ、お前たち、あんなに遠い浜から、こんなところまで私のお供をしてくれてありがとう」と言って、二人を抱え上げて、さっと三人一緒に鍋に飛び込んでしまったんだ。そしたら、鍋の中で、ほら、油はたぎらせてあるのだからね、右まわりに廻ったそうだよ。沖縄のこの尚家の御紋は、三つ巴だろう、これは左御紋なんだが。こうして廻ったら右廻りだがね、こうして廻ったら左廻りと言うよ。沖縄の尚家の御紋はね、三つ巴だろう、この三人がこう左に廻ったからだよ。こうして廻ったら、当り前の右回りだが、これは左廻りというからね。こうして回っているこの沖縄の御紋の型はね、この時から出たらしい。