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宜志富紹長さんの語り

城間仲の黄金出世(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

城間ナーカという人は、昔、浦添下門(しむじょう)の下男だったそうだよ、下男だったんだよ。そこは、五、六人の下男がいたらしいがクシユックイの日に、主人が銭を十銭とか二十銭とかやって、「お前たち、今日は遊んでこい」と行かせたんだ。城間ナーカは、とっても働き者で、そこの下男頭をするぐらい、大変真面目に働く下男だったらしいさ。ところが、これが翌日になっても帰って来ないんだ、残りの者は来ているが。「あいつが、こんなになまけるはずはないけどな」と、主人は仲間の者に尋ねたりしたあと、あれはこんな事をする子ではないからとあちこち捜していたら、ずうっと遠くの魔物が出るという人里離れた所でな、松の木に縛られて座らされていたらしいよ、この浦添下門の下男頭は。「どうしたんだ、お前は」と聞くと、「悪うございます、悪うございます」というばかりなんだよ、もう、仕事をしに行ってないんだから、なまけていたんだから。「悪うございます、悪うございます」と、とってもわびるらしいさ。わびるだけなので、主人は縛られているのを外してやったらしい。

すると今度は、主人にひざまずいて、お願いをしたらしいんだ。「どうか、私の願いを聞いてください」と主人に願うと、「何だ、お前の願うことは何でも聞いてやる」といったんだ、もうここの下男頭なんだから、お気に入りの下男なんだから。「お祈りをするので、ご馳走と酒を入れたサンミ道具一そろいと、かごと鍬と棒を貸してください」と言ったらな、もうこれは、主人がとっても気に入っている下男の願いなので、主人は、言われたとおりお祈りをするための御馳走をおぜんのいっぱいと酒とをお貸しになり、また棒とかごと鍬とをお貸しになって、いっしょに下男が縛られていた所へ行ったらしいんだ。

そして、この下男はそこでこの御馳走を供えてね、ウートートゥとお祈りをしたらしいよ。それから、お祈りがすむとな、今度は、裸になって鍬でドンドンとそこを掘ったそうだよ。すると、ここから黄金が出てきてな、このかごにいっぱいと、その御馳走を用意してきたおぜんのいっぱい出てきたらしいんだ。その下男はね、「かごのいっぱいは、あなたさまがお取りください、もう私は、あなたさまの体の一部なんだからね、あなたさまに買われているんだから、かごのいっぱいはあなたさまがお取りになって、おぜんのいっぱいは私にください」と、お願いしたらな、ここの主人もまたね、「いやいや、これはお前の物だ。私は何もいらん。それは、お前の物だ」といってね、お互いにゆずりあっていたらしいんだ。それで、とうとう主人は、「よし、それならおぜんのいっぱいは私がもらうからね、お前は、かごのいっぱいを取れ」といってね、その下男にかごのいっぱいの方を取らせて、それから、身代金も勘弁してやって、「さあ、お前は、お前の体になれ」といったらしい。

それで、金持になった城間ナーカは、あっちこっちと屋敷を捜しまわったんだ。ほら、これは屋敷も無いくらいの貧乏者だったから、屋敷を捜しまわっていると、今の屋敷の所に来てな、休んでいると、米をひく音がし、馬のなき声もする 風水のいい所があったらしいんだ。「ああ、ここなら金持になれる」といって、「私は、ここを屋敷にする」と、その村にお願いしたらな、「別の場所なら良いが、ここはだめだよ」と言われたんだ。そこの村の人は、「そこで屋敷をもった人は、もうすでに三家族がほろびてしまった。そこはだめだ、別にしなさい」と言ったそうだが、「いやだ、どうしてもここをゆずってください」と村に願ってね、こう願ったら、あとは、これの願い通りにかなって、ますます金持になったという話だよ、この城間ナーカという人は。これは、ほんとうの話なんだよ。

城間ナーカは、仲間にねたまれて縛られて。魔物がいるという所に縛られたんだが、夢にまで、黄金の花が咲いていたらしい。

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