※Flash Playerがインストールされていないと、正しく再生できない場合があります。
【語りの梗概】
あれはね、ある女と男が、「あなたが死んでも私が死んでも、夫も持たず、妻ももらわないことにしよう。」と約束をしたらしいのだがね。そうして、そのように約束して、この妻は先に亡くなったわけさ。約束したので、「もしこの女が幽霊になって出て来たら、私は後妻をもらうことができない。」と考えて、死んだ妻の手足を黒綱で縛った。黒綱というのは マー二の木で棕梠の木の皮と同じく、綱をつくったものだよ。この黒綱というのは全然腐らないよ。手も足も黒綱で縛って、葬式したんだよ。そうして夫は、後妻をもらって子も産んでね。すると、今度は亡妻が幽霊になって、「もう、この(子供の命を)取ろう。」としているわけさ。「私たち二人は、夫が死んでも妻が死んでも、妻ももらわない、夫も持たないという約束なんだ。それなのに私をここから出られないようにし、手足を黒綱で縛って、私をこんなにして。」といってよ、しかし、幽霊は、願いというのは、誰にでも頼めるというものではないんだよ。与那原殿内の国吉親方という人は冒険家なんだが魔物が出る所、墓場のあたりを歩いていると、首里の坂下という所で手と足を縛られて逆さまになった女が幽霊になって出てきた。その時、もうこの与那原殿内の国吉親方という御方は、偉い人で勇気のおありになる方なのでね、幽霊はこの人にこそ頼む事ができると考えて、「実は、私は幽霊ですがね。私たち夫婦は、妻が死んでも夫が死んでも、妻ももらわず夫も持たないようにしようねと、約束したのに、夫は後妻をもらい、私の手足を黒綱で縛って葬ったので、今は歩けなくて、このように私は逆立ちしていますがね。今日は、(夫が)妻をもらって子を産み、そのお祝いだというから、どうかあなた、この私のお願いを聞いて下さい。」と「あなただけが頼みなのです。」と言うと、「ああ、それならいいよ。」と答えた。ほら、この人は度胸のある人なので、魔物など恐くないわけだからね。そこで(国吉親方が)「それで、お前はどのようにしてこの家に入るのか。」と言うと、「実は、私は、その家に行って、あの子供の命を取ろうと思うけどね、あの人たちの命を取ろうと思うけど、ミンの札という坊主の書いたもの、その家には魔除けのミンの札というものが貼られているのでね、私は入ることができない。そこの家の門に貼られているので、この家に入ることができない。私がそこをまっくらにするから、そのあいだにあなたが行って、このミンの札をはぎ取って下さい。」とお願いだったってよ。「そうすると私は中に入ることができるから。」と言ったわけ。「ミンの札が貼られているので、幽霊は入れないのだが、この魔除けをはいで下さったら、私は入ることができますから。」と幽霊が言うと、国吉親方は「ああそうしてあげよう。」と承知した。そこで、その女の幽霊が、夫の家の人々の目をくらまして、家の人たちに国吉親方の姿を見えなくしたので、(国吉親方が)入って行ってその、ミンの札をはいだらね。そしてその後から、女の幽霊は家の中に入って、もう皆の、子供の命も取ってしまったという話なんだよ。首里の逆立ち魔物という話だよ。逆立ち幽霊というものね。