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宜志富紹長さんの語り

名護親方と具志頭親方(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

名護親方は、具志頭親方と一緒に沖縄からの留学生として、唐の国へ行かれたそうだ。ある日のこと、名護親方たちが、学校へ行こうとすると道のそばで火をおこして、茶を沸かしたり煙草を吸ったりしている乞食がいたそうだ。それをみた具志頭親方や他の仲間たちは「汚ない乞食だ」と言って、そのまます通りして、学校へ行ってしまったんだって。ところが名護親方は、この道のそばで茶を飲んだり煙草を吸ったりする乞食の所へ行き、「煙草に火を付けさせてください」と言って、火をもらい休んだそうだ。すると、具志頭親方や仲間たちが、「この名護は人でなしだ。あんなきたない乞食の所に煙草を付けに行くなんて」と馬鹿にしたんだね。でも名護親方の目にはこの人は乞食には見えなかったんだね。本当はこの乞食は聖人であったんだから。そして、その乞食の所から煙草を吸って出てきたんだね。すると具志頭親方が、「おい名護よ、お前はあんな汚ならしい乞食の所へも行くのか」と叱ったら、「ほほう、あなた方には、あの人は物乞いに見えたんですか。私には物乞いには見えませんでしだよ。私は、ほら、こんな物をもらってきましたよ」と言って、字の書かれたものを見せたんだって、これが乞食でない証拠だっだんだね。この書き付けは名護の宝字といって、近ごろまで、名護殿内(どぅんち)にあったそうですよ。この書き付けは雨降りの時、軒下に下げても水を弾(はじ)いてぬれなかったと年寄たちが話していたよ。

歌問答‥‥そして、名護の親方も具志頭親方も通訳でいらっしゃるので、それで沖縄にお帰りになって、名護親方は聖人なんだ、具志頭親方は改治家でいらっしゃるんだな。名護親方が、「誉(ふ)みらりし好(し)かん すしらりし好(し)かん〔誉められるのも好かん そしられるのも好かん〕浮世(うちゆ)楽々(らくらく)とぅ 渡(わた)らな〔何事もなく浮世を安らかに渡りたいものだ〕」と、自分の精神を詩にして言ったら、具志頭親方は、「すしり誉(ふ)みらりし 世(ゆ)ぬ中(なか)ぬ手本(ていふん)〔そしられるのも誉められるのも世の中の手本〕沙汰(さた)んねん者(むん)ぬ 何役(ぬやく)立(た)ちゅが〔評判もない者が何の役に立つか〕」と言ったそうですよ。やはり上の地位の人を叱るのはあれなんだ。今の時代でも、反対党が叱るし、自分の党にはほめられるんだ、ちょうどこれと同じことなんだよ。「出る釘はうたれる」といって、政治家というのは、いつの世も風あたりが強いというもんだよ。

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