琉球王朝の以来の豊かな歴史と文化を伝える沖縄の伝承の記録は、柳田國男、折口信夫等の主導のもとで行われてきましたが、1960年代以降はテープレコーダを利用した音声データ記録が一般化しました。
特に沖縄国際大学の故遠藤庄治教授の指導のもとに行われた聞き取り調査は、沖縄全域にわたる約73000件の記録を残しました。 この記録は、カセットテープとカードによって整理され沖縄伝承話資料センターに保存されていますが、時とともに劣化する運命にあります。
私たちは、平成19年度から24年度までを第一期として、日本学術振興会の研究助成を得て、劣化の可能性の高いデータをデジタル化して喪失を防ぎ、さらにデータベース化して、沖縄県立博物館・美術館に移管してきましたが、なお沖縄本島や宮古、八重山の重要な地域の記録が欠落しています。
平成29年度からは、この欠落を補い、沖縄全域の口頭伝承資料を網羅したデータベース作成することを目的として、第二期の事業に着手し、平成30年11月現在までに44700件の資料のデジタル化に成功しました。 沖縄においては、近年「しまくとぅば(沖縄言葉)」が急速に失われつつあり、喪失の危機が顕在化しています。 沖縄全地域の口頭伝承を「しまくとぅば」と共通語で記録した本記録は、今後二度と繰り返すことのできない調査の成果であり、沖縄のみならず日本の貴重な文化遺産です。 これまでにデジタル化されたデータは、沖縄県立博物館・美術館館のデジタルミュージアム計画や粟国村の粟国アーカイブス等に活用されていますが、まだ約28300件の資料が残され、喪失の危険にさらされています。
私たちは、この貴重な資料がデジタル化され、データベースとして沖縄県立博物館・美術館館のみならず、全国各地の博物館、民俗・歴史資料館、大学等の研究教育機関、図書館、公民館等に提供され、さらにインターネットを通じて公開されて、沖縄言語文化の保存と活用に寄与することを願っています。
みなさんの参加をお待ちしています。どうぞ、ご意見をお寄せください。
沖縄伝承話データベースについて
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平成31年度の研究計画の概要
NPO法人沖縄伝承話資料センターが管理する、故遠藤庄治の主導のもとに調査された沖縄全域にわたる神話、伝説、昔話、世間話、民謡、民俗信仰など多岐にわたる約50000件の口頭伝承資料をデジタル化し、さらに話者、地域、記録者、記録日時・場所、話型、キーワードなどの40項目によって検索可能なデータベースを作成する。
現在、センターが管理するアナログデータ件数は73000件あまりで、平成19年度から日本学術振興会の助成のもとに、劣化の懸念される約44700件が優先的にデジタルデータ化され、県立博物館・美術館などのに提供された。しかし残された28000件あまりのデータは、カセットテープを記録媒体としているため、劣化の懸念されるものが少なくない。また、現行のデータベースには地域的な空白が多く見られ、大きな問題を残している。特に、沖縄本島北部の名護市、中部の那覇市、浦添市、南部の八重瀬町や、宮古・八重山をはじめ座間味、渡嘉敷、渡名喜などの島嶼部のデータに未達成の空白が多くみられる。
平成31年度は、こうした現状を踏まえて、下の6つの事業を展開する。
① 沖縄本島北部の名護市、中部の那覇市、浦添市、南部の八重瀬町等の都市部を中心に6000件の語りをデジタル化し、データベースを作成する。
② デジタル化されたデータをホームページ上に公開するとともに、多言語化を促進し海外への文化情報の発信を強化し、海外の研究機関と情報交換し、国際比較研究協力を推進する。
③ デジタル化を完了した資料を沖縄県立博物館・美術館、宮古島総合博物館、八重山博物館、名護博物館などに提供し、そのデジタル・ミュージアム計画に寄与する。
④ 沖縄県の「しまくとぅば」普及推進計画に協力し、粟国村などのデジタルアーカイヴ計画を推進する地域行政組織や民間組織に「しまくとぅば」普及の基礎となる資料を提供すると同時に、ホームページ上に共通語と「しまくとぅば」の語りを並列して公開し、誰もが語りを通して「しまくとぅば」に親しめるような場を設ける。
⑤ 昔話を聞いた経験は乏しいが「しまくとぅば」の伝承の重要性に気付いた「新しい世代の語り手」を支援し、語りの資料を提供する。
⑥ 本委員会の使用規約を遵守し、所定の条件を満たす研究者や教育者に「沖縄伝承話データベース」を無償で提供し、沖縄口承文芸の研究と教育に寄与する。
平成32年度以降は、沖縄本島、宮古、八重山のみならず、座間味、渡嘉敷、渡名喜などの離島を含めたデジタル化とデータベース化の未達成地域の欠落を満たし、沖縄全地域をカバーする口頭伝承と「しまくとぅば」のデジタル・アーカイヴを完成する。
沖縄伝承話データベース作成委員会 スタッフ
氏名 | 所属機関など(専攻分野) | 役割分担 |
---|---|---|
比嘉久 | 名護市教育委員会文化財課長(民俗学・口承文芸学) | 総括・データ選定・システム設計・画像処理 |
常光徹 | 国立歴史民俗博物館名誉教授(民俗学・口承文芸学) | 監修・データ選定・校正 |
照屋寛信 | NPO法人沖縄伝承話資料センター理事長(口承文芸学) | 監修・データ選定 |
山口真也 | 沖縄国際大学総合文化学部教授(図書館情報学) | 監修・データ選定 |
西岡敏 | 沖縄国際大学総合文化学部教授(琉球方言学) | 監修・データ選定 |
大湾ゆかり | 沖縄県立博物館・美術館 主任学芸員(民俗学・口承文芸学) | 監修・データ選定 |
加治工尚子 | 岐阜女子大学文化創造学部講師(口承文芸学) | 監修・データ選定 |
村山友江 | 読谷夕顔の会事務局長(口承文芸学) | 監修・データ選定・校正 |
岩倉千春 | 日本民話の会運営委員(比較民俗学・口承文芸学) | 監修・データ選定・校正 |
沖縄伝承話データベースの利用規定
- (1) 沖縄伝承話データベース作成委員会(以下、委員会といいます)の作成した沖縄伝承話データベース(以下、データベースといいます)に収められたデータの二次使用は、教育等の公共目的にかぎられます。
- (2) データベースに収められたデータの著作権は、個別には語り手と聞き手(記録者)および記録者の所属組織に存します。
- (3) 委員会は、当該著作権者の了解の下に、著作権保護上必要な管理業務を行いますが、当該業務からの仲介手数料等の料金が発生することはありません。
- (4) 委員会によって公開されたデータの二次使用を希望する場合には以上3点を了解のうえ、委員会に許可を求めてください。委員会は、本データベースの使用が、教育など公共目的に合致すると判断される場合、しかも当該利用が語り手、記録者、記録者の所属組織のプライバシーに抵触しないと判断した場合には、すみやかに使用許可を与えます。
- (5) データベースのデータを委員会の許可をなく使用し、著作権法上の違法行為を行った場合、責任は当該違法利用者にあります。
- (6) データベースのデータを委員会の許可を得て使用しながら、CD-ROMの作成などを通じて、教育以外の目的に使用し、著作権法上の違法行為が行われた場合、責任は当該違法利用者にあります。
- (7)データベースのデータを委員会の許可をなく使用し、語り手、聞き手、地域の人々などのプライバシーに関する保護義務を怠った場合、責任は当該違法利用者にあります。
- (8)データベースのデータを委員会の許可を得て使用しながら、語り手、聞き手、地域の人々などのプライバシーに関する保護義務を怠った場合、責任は当該違法利用者にあります。