宮城トシさん(東村平良)
宮城トシさんは、1900年3月5日に東村平良で生まれました。トシさんは、この話を大宜味出身のお母さんから聞いたそうです。聞き手は、沖縄口承文芸学術調査団の屋比久さん、1979年8月4日の記録です。
【しまくとぅば】
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【語りの梗概】
昔は天の人が本当にいたそうだ。大雨の正月に宿を貸してくれと、雨にぬれた神様が金持ちの家に行くと「正月に宿は貸せない」と断られる。また、子供のいない貧乏人のおじいとおばあは、いつもその金持ちの米俵を叩き落として食事をしていた。しかしその日は正月で買う人が多く、叩かすものはないと断られ、おじいとおばあはなくなく帰って火を燃やして火正月をしていた。そこにその神様が来て「正月ではあるが宿を貸してくれ」と来たので、二人は驚いて「食べる物もないので火正月をしている」と言うと神様は「こんなに濡れて寒いから。後ろの家には正月には宿を貸さないと断られたので、ここに来た。一緒に火正月しましょう」と言った。その人が鍋を用意しなさいと言うので用意すると、何かを入れた。すると、おつゆにおかず、ご飯ができた。それで三人で年を越すことができた。その人はまた、「若くなるのと金持ちになるのとどっちがいいか」と聞くのでおじいとおばあは「若くなったらいくらでも儲けられるので、若くなるほうがいい」と答えた。すると翌日鍋に湯を沸かして、また何か薬を入れ、そのお湯を浴びると、二人とも十七、八の若者になった。そして金持ちの家に挨拶に行くと、金持ちは驚いて訳を聞くので「夕べ、天の人が湯を沸かして浴びなさいと言うので、言うとおりにした」と言った。金持ちは馬に乗りその人の後を追って連れてきた。そしてその人が言うとおり湯を沸かして浴びた。下男たちも湯を浴びた。すると金持ち夫婦は猿になり、下男たちは烏や長いものになった。若くなったおじいとおばあは神様のいいつけで金持ちの家に住み始めた。すると毎日のように、いつも同じ時刻に猿になった金持ち夫婦がやってきて「私の金を返せ」とうるさく言って眠れなかった。おじいとおばあは神様に相談した。すると神様は「猿達が来ていつも座る石を焼いておきなさい」と言った。言われたとおりにしておくと、猿がやって来てその石に座った。猿は「あきさみよー」と言って山に逃げた。それから猿は来なくなった。それから猿の尻は赤くなった。