沖縄伝承話データベース

東村の猿長者の語り

波名城常臣さん(東村宮城魚泊)

波名城常臣さんは、1912年10月10日に東村宮城魚泊で生まれました。常臣さんは、この話を村の長老から聞いたそうです。聞き手は、沖縄口承文芸学術調査団の又吉さん、1979年8月2日の記録です。

【共通語】

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【語りの梗概】

ある貧乏人が金持ちの家へ行って、大みそかの日に肉を一斤売ってくれと訪ねるが、金持ちは「お前ら貧乏人に金があるのか」と言う。貧乏人は「金はないが儲けて払いますからお願いします」と頼むが断られ追い返される。

その夜、乞食が宿を貸してくれとやって来る。正直な貧乏人は「自分の家には敷物も何もない、向こうの家に行けば何もかもそろっています。そこで泊まったらどうですか」と言う。乞食が、土間でもどこでもいいからと言うので、それならばとバナナの葉を切ってきて、それを敷いた。乞食が「あなた達は食べ物も何もないのですか」と問う。「ありません」「それではなべに水を入れてかけなさい」と言う。言うとおりにすると「もう焚けているから蓋をあけてみなさい」と言う。中には昆布、肉、豆腐、などがいっぱい入っている。爺さん婆さんは「こんなご馳走は生まれて初めてだ」と喜んだその乞食は本当は神だった。その晩、神様は「朝になるとむこうから鍋を借りてきて湯を沸かして浴びなさい」と言った。翌朝、その神の姿は見えず、寝ていたところには小判が山のように積まれていた。言われたとおりに湯を沸かして浴びると二人とも17、18才に若返った。

婆さんが隣の家に鍋を返しに行くと「あなたはあの家の娘か」と尋ねられるので、いつもの婆さんだと答えると、金持ちは「冗談じゃない」「いや本当ですよ」「どうしてこんな若くなったのだ」と言うので、この鍋でお湯を沸かして浴びたらこうなったと答えると、金持ちは「そうか」と言って自分達も湯を沸かして浴びてみると、鳥と猿になり家から出て行った。

それから再び神が現れ、「あの家にはもう主がいないから、あの家にあなた達は住みなさい」と言う。引っ越すと猿がやってきて「私の家を返せ」と言っては庭石の上に座る。毎晩猿がやって来るので、爺さんと婆さんは手を合わせて「こういうことなので自分達の家に帰ります。この家はもういりません」と言う。再度、神様が現れ「猿が来る時間に、その石を焼いておきなさい」と言う。言われたとおりにしておくと、そこに猿がやって来て座った。それで猿の尻は焼けてしまい赤くなってしまった。

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