沖縄伝承話データベース

親川富二さんの語り

モーイ親方 嫁釣り(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

モーイ親方(うぇーかた)の小さい頃の話なんだけど。昔、このモーイ親方には、許嫁(いいなずけ)されている女がいたようだが、許嫁の話を耳にするだけで、許嫁の女の人をいまだにモーイ親方は見たことがなかった。「どのような女だろうか。ぜひ一度は見なければ。」と思って、「どうすれば、この自分に許嫁されている女を見ることができるだろうかなあ」と言って、いろいろ考えた末、しばらくして、「ああ、とお、いい考えがある」とこのモーイ親方は、あっちこっちの鶏を集めて飼い馴らして、その鶏を自分の許嫁になっている家に持って行くと、そこの庭に鶏を放したそうだ。そこの家の人達は、「何だろう」と驚いて、皆、飛び出してきた。そのときに、自分の許嫁になっている女が飛び出てきたのを初めて見たので、このモーイ親方は、この鶏は捕まえないで、「あ、やっと見たぞ、見たぞ」と声を上げ喜んで、家に帰ったそうだ。そしたら、この許嫁にされている女の親達は、「とお、モーイは馬鹿者だという世間話を聞いてはいるが、ほんとに話のとおりだ。こいつは気違いなので、こんな者と夫婦になったらもう大変な ことだ。これは断った方がいいだろう」ということになって断りに来た。 そしたら、このモーイ親方は、また、「この後は、どうしようか」と言いながら、自分に許嫁になっている女の父親が首里の務めから戻ってくるのを見計らって、道の側にある大きな木の枝に登って、ちょうど自分の許嫁されている女の父親が帰っていらっしゃるのを待ち受けて、ちょうど自分が登っている木の下を通りなさったときに、この許嫁になっている女の父親の髪に、その引っかけるもので引っかけて吊り上げたら、するとこの許嫁の父親は、し ゃがんで、上を見て、「とお、何てことだあ。誰かと思えばモーイか、お前はどういうつもりなんだ」と言うと、このモーイ親方は、「もう引っかかっている。引っかかってしまったものは、はずれないことでし ょう」「ああ、そうか。ああ、そうだな。そういうことは当然分かっているよ。お前が言うことは十分に分かっているから、これをゆるめて、許してくれ」と言って、許されたということだ。そうなると、「許 嫁されているのだから、もう何と親達がいい戻そうとしても、二人の縁は結ばれているのだから、もう結ばれてる縁は離れることは出来ないのだ」と言って、それで、二人は夫婦になったという話があるよ。

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