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【語りの梗概】
後生は雨落(あまお)ちという謂われの話をしましょう。昔、ある所に大変な豪農、つまり大変大きい農家があったようですが。その農家は下男や下女を多く使っていたようです。それで、この節日(しちび)に、この雇っている下男とかまた下女とか、そういう人達に大変、美味しい物を準備してあげて、そして、自分の御主人には、もうウジュルオーファをこんなしてあげたから、この主人は、したたか憤慨して、「どうして、今日は節日というのに、使用人達に美味しい物をやって、こんなして、私にはこんな悪いウジュルオーファをくれるというのはどういう訳か。」と、そうして、夫婦喧嘩して。「もう、お前は、妻にするわけにはいかないから出て行け。」といって、そうして、自分の妻を家から追い出して。そうして、しばらく、時も日も経ってから、その家庭は段々貧乏になって、それで、もうそうしてから、そこで働いていた男達も女達も皆もう出て行って、もうこの夫である男主人だけが、残っていたようだ。 それから、またこの家から追い出された女は、またいい夫をもって、大変な金持ちの家の嫁になって成功していたようだ。そうして、この後から嫁になって行った御主人が用事やらなんやで、遠くの余所の村に旅に行ってらしたようだが。先夫がもう食べる物も無く、乞食同様になって物乞いして、あっちの家もここの家も、あのシマもこのシマも歩いていたようだが、たまたま、自分の元の妻の家に物乞いに来たら、この夫は自分の先妻が、もうこんなに良い家庭に入って、富裕しているとは知らず、そこに入って行って、「かくかくしかじかで、ひもじい思いをして歩いていますから、何かありましたら恵んでください。」と言ったから、それで、この先妻が、「あれ、あなたは私の先の夫ではありませんか。」と聞いたところ、この夫はもうそこでびっくりして、「ああ、お前は私の先妻だったのか。」と言って、そこで、その夫はそのショックで魂を奪われて直ぐそこでもう目を閉じて死んでしまったから、「もう一大事。夫はまたもうすぐ帰って来る。そういうことになったら大変だ。」と、もうこの家族、また使っている下男達も皆で相談して、「もう当座のことだから、葬むる事はできない。この雨落ちの下は人が出入りして、またこの魂を足でもって踏んだら、魂が出てこないからそこに穴を掘って埋めることにしよう。」そこに埋めて、この魂を出さない考えして、もう客が出入りする所だから、その跡にまたとっても大きな石を置いて、それで、そこに下駄や草履を置いて、いつも足で踏みつけて、その魂を出さないようにした。 その意味から、人が出入りする雨垂れには大きな石が置かれていて、その道理から雨垂れ後生という言葉があるという話であります。