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【語りの梗概】
昔、あるところに大変仲の悪い兄弟がいた。弟は猪捕りをしていた。弟には格別仲のいい友達がいて、日頃から兄弟のようなつきあいをしていた。ある日、弟は鉄砲を担いで猪を捕りに行った。そして、畑を荒らしている猪を見たので、忍んで行って畑の中の猪を捕ろうと鉄砲を撃った。畑の中に行ってみると、猪ではなかった。「猪だと思ったが猪ではない。私は人間を鉄砲で撃ち殺してしまった。これはもう一大事だ」と言って、びっくりして家に帰り、兄のところへ行こうかと考えたが、兄とは仲が悪いので行けなかった。それで兄弟のようにつきあっている友達のところへ行って、わけを話した。「私は、猪だと思って誤って人を殺してしまったから、私を助けると思って一緒に行ってくれ」「それは大変だ。確かに君の言うとおり、普段君と僕とは大層格別の仲だが、でも人一人殺したんだったら、それを一緒に行ってなんとかしてくれと言われても、僕にはそんなことは恐ろしくてできない」と言った。弟は、兄に頼るしかないと思って、日頃は大変仲が悪いけれども仕方がないので、兄のところへ行ってわけを話した。兄は、「そうか。これは一大事だ。人を殺してしまったのならどうしよう、どこか、一緒に行こう」と言って一緒にその場所へ行った。見ると、人ではなくて猪だった。それで、二人で夜中にその猪をかついで帰ってきた。こんな話も昔からあるから、人と人というのは、一緒に食ったり飲んだりしているうちは、兄弟のように大変仲良くしているが、いざこのような命に関わることになると、「私は知らないよ、私には関係ないよ」という、他人というのはこんなものだ。兄弟というものは、常日頃は仲が悪くてもいざ何か事が起これば、どうしても、これは、指は前に折れるものだ、指は後ろには折れない。血を分けて生まれた兄弟は、良くても悪くてもやはり兄弟なのだから、日頃は喧嘩ばかりしていても、兄弟というのは宝なんだよといって昔からこんな話がある。