沖縄伝承話データベース

親川富二さんの語り

烏と弁当(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

継母が、夫の先妻との子、継子を苛めたという話を聞いた。自分が産んだ実の子には常日ごろから美味しい物を食べさせて、継子には不味い物を食べさせていたそうだ。ある日、継母はぜひともこの先妻の子、継子を殺さないといけないと思った。その日、畑に行く継子に美味しい弁当を持たせた。毎日一緒に畑に行っている年寄りの方々が、継子が弁当を広げて食べようとした時に、隣にいた年寄り達はそれを見た。「ああ、子供よ、あなたは弁当食べようとしているが、ちょっと待てよ。今日、あなたが食べようとしている弁当はちょっと変わっている。まず、烏に試しに喰わしてから、あなたは食べるようにしなさい。まず、少しだけあなたの弁当を烏に食べさせてみよう」と言った。それで、烏に投げたら、烏は弁当を喰って、しばらくすると空で烏は暴れて落ちて死んでしまった。これは一大事、毒が入っているんだ」ということで、「これは毒が入っているから、お腹がすいていても食べてはいけないよ。あなたが『御馳走さまでした。お母さん』と言うんだよ。この弁当は包み直して、家に持って行きなさい」と、隣にいた年寄りたちが言い付けた。子供は言いつけられた通りに、弁当を持って帰った。そして、お母さんに、「今日の弁当は大変美味しかったです。御馳走さまでした。だけど、全部は食べることが出来なくて、このような美味しい物を捨てることもできずに持ち帰って来ました」と言った。すると、継母は、「毒を入れて持たせたから、今頃は倒れて死んでいると考えていたのだが、これは大変珍しいことだ。毒だと思って入れたのに、どうして間違えてしまったのか、これは美味しい物だしもったいない。捨てるわけにはいかない。こいつが食べても死ななかったのだから、残してある物は、自分の産んだ子供に食べさせよう」と言って、自分の産んだ子供を呼んで、「これは美味しい物だから食べなさい」と食べさせた。毒が入っているから、すぐさまこの子は死んでしまった。母親はその場で、「アキサミヨー」と泣いたが、今さら泣いても始まらない。昔の継母と継子というのは大変な事だったって、そういう伝え話がある。

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