沖縄伝承話データベース

親川富二さんの語り

女の徳 後生は雨だれの下(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

昔、ある所に大きな百姓の家があり、下男や下女を多く使って、穀物なども豊作で豊かに生活していた。そこの家の妻はとっても徳があり、賢かった。ある折目の日に、妻は、祖先や下男下女においしい食べ物をあげて、御主人には、日頃おいしい物を食べているので、食べ物のありがたさを知ってもらおうと考え、粗末な物をあげた。すると、主人は、「どうして使用人達にはおいしい物をやって、私にはこんなまずい物を食べさせるのか。お前を妻にするわけにはいかないから出て行け」といって、妻を家から追い出した。その後、女は再婚していい夫をもって、大変な金持ちになって成功した。元の夫は、妻を離縁した後、金を使いすぎて段々貧乏になり、何年か後には乞食にまで落ちぶれてしまった。そして、あっちの家こっちの家をまわって物乞いして歩いていた。ある時、元の妻がいる所とは知らずに物乞いにきた。そこの家の主人はちょうど、用事で何日か出かけて行って家を留守にしていた。そこへ、元の夫が物乞いに来た。妻は、元の夫が、食べ物も食べずにやせ細って、あまりにもかわいそうだったので、「あなたは私の元の夫ではありませんか」と言って、食べ物を与えた。しかし、元の夫は、あまりにやつれていて運悪く屋敷内で死んでしまった。それで、妻は、「元の夫がこうなっては、主人に申しわけがたたない。早く、雨だれの下に穴を掘って埋めなさい」と言って、死体を埋めさせた。そして、埋めている所から魂が出てきてはいけないからと、「そこに大きな石を持ってきてのせなさい」と言って、大きな石を雨だれの下に持ってこさせて置いた。そして、妻は「このことは主人にも誰にも言ってはいけない」と口止めし、始末した。なぜ、雨だれの下に埋めたのかというと、雨だれの下は、毎日人が足繁く踏みつけている所なので、そこに埋めれば魂は出てこないからということだった。

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