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【語りの梗概】
昔、どうして猿の尻が赤くなったかという話。昔、ある所に大変金持ちの農家があった。もう一箇所は大変貧乏な夫婦が住んでいた。年の晩に、フクターをまとった大変見苦しい旅人が、金持ちの家にやってきて、「旅の者だが、夜も暮れてしまって泊まる所もない。今日一晩は、泊めてくれないか」と、お願いした。金持ち夫婦は、「正月、年の晩だというのに、あなたを泊めることはできない。早く自分の家に行くか、別の所へ行って泊まってくれ」と言って、帰された。仕方がないので、年寄りのお爺さんは、また歩きながら、ある家に行った。「今日一晩は泊めてくれないか」と言うと、そこの夫婦は、「見ての通り、足を入れたら頭は出る、頭を入れたら足が出るくらいの家です。このような貧乏暮らしをしているのです。今日は、正月の年の晩になっているが、自分たちは貧乏の限りで食べる物もありません。地炉で火正月をしているところです。二人が眠るところも、このような狭い家で眠りづらいところで、とても三人は寝ることはできません」と言った。「どこでもいいので、一夜は泊めてくれないか」「そうおっしゃるのでしたら、狭いところではありますが、あなたがよろしいのでしたら泊まっていいですよ。どうぞなかへ入って下さい」と。そして、いろいろ話をしていると、お爺さんが、「今日は沖縄の正月の年の晩だが、食べる物もないというのはどういうことか」「今先言った通り、このように食べる物もありません。夫婦で火正月をしようということでやっていたところです」「そうならば、早く鍋をかけなさい、私が少しの米を持っているから」と言った。そして、このお爺さんが、鍋に少しの米を入れたら、たくさんの米になった。この家族は珍しがって、喜んだ。御飯が出来て、ちゃんと正月もした。翌日、このお爺さんは帰る時に、「一夜泊めてくれて、大変感謝している。あなた達は、年を取るのと若返るのとどっちが良いか」「私達は若返るのがいいです」「じゃあ、私が持って来てある水で浴びなさい」と言って、このお爺さんは帰られた。お爺さんが言われた通りに、夫婦はその水で浴びると、たちまち若返った。それからこの夫婦は金持ちの家に、今日は正月だということで行った。「良い正月ですね」「あなた達はどこの人か」「私達は隣の貧乏者の夫婦だよ」「どうして、いつの間にこのように若返って、どういうことか」「実はこうこうで、昨夜、年寄りがいらっしゃって、一夜だけ泊めてくれと頼まれて、泊めてあげたら、その恩として、持っていらっしゃった水で浴びなさいとくれたんだ。それで浴びると、このように若返ったんだ」「そのお爺さんはもう遠くまで行っているか」「今だったらそんなに遠くまでは行ってない」「だったら、私達もそのお爺さんを連れて来て若くなるとしよう」と。そうして金持ち夫婦は走って、そのお爺さんの後を追って行った。「お爺さん、早く私達の家にいらっしゃって下さい」と、呼び戻してから、「前の家の貧乏人が若くなっているように、自分達も若くなりたいです。若くして下さい」「それだったら若くしようね、それで浴びなさい」と言って、同じように水を汲んで来た。そしたら金持ち夫婦は、猿になってしまった。猿というのは生き物だから、山に逃げて行ったそれで、若夫婦は、空き家になった金持ちの家に移って暮らした。その時、猿になった二匹が、「自分の家だ」と、いつも瓦葺きの自分の屋敷の木に登って、毎日のように来たらしい。このようにしてはいけないと思っていると、またもこのお爺さんがいらっしゃった。「毎日、猿が二匹やって来て、家の頂きに登って、自分達の家だと見ているが、どうにかして退治する方法はありませんか」と聞いた。「そうだったら、猿達がいつも座る瓦を思いきり火で焼き付けておきなさい。そうすれば、次から来なくなるから」と教えられた。その通りに瓦を火で焼いておくと、二匹の猿はそうとは知らずに、そこは自分達の家だと、そこに座った。すると尻は見事に火で焼けてしまったって。それきり、猿はこの家に来なくなったそうだ。それから猿の尻は赤くなったという話。