アカカナジャーの芋ほり
伊平屋村我喜屋の名嘉光申さんの語りです
アカカナジャーの話でしょ。こっちの婆さんが芋掘りに畑に行ったらですな、そこにアカカナジャーが毎日来よったらしいですよ。だから、婆さんが家に帰ってって爺さんに、「毎日芋掘る所に、アカカナジャーが友達、友達と言って来ておるよ」と話したらしいですよ。だけど、爺さんは、アカカナジャーを見たことも、付き合ったこともないんだから、爺さんは承知しない。それで、婆さんが、「そんなら、いつか私と一緒にあの芋畑に行って、あんたは木の下に隠れおってください。私の所にアカカナジャーが来たら呼ぶから、そのときに来て見てください」と相談して、芋掘る所に夫婦連れで行って、婆さんは芋を掘る。爺さんは木の下に隠れておったそうです。そしたら、芋を掘っている婆さんのところにアカカナジャーが来たもんですから、婆さんが、「今来ておるよー」と言って爺さんを呼んだもんだから、アカカナジャーは、すぐに高い山の頂(ちじ)に逃げて行ったらしいですよ。今はアカカナジャーはいませんが、その婆さんが芋掘をした畑は今もこっちにありますよ。昔は芭蕉苧麻(ばさーうー)をつないで、機織って、それで芭蕉着物(ばさーじん)といって着物つくりよったでしょう。その婆さんが芭蕉糸(ばしょううー)を紡いでいたら、そのアカカナジャー来て、婆さんに頼みよったのは、「わしも芭蕉糸を繋いでやるから竹をこんな波に切ってですな、尖らせてわしにください」と言うから、婆さんが芭蕉糸をくびって切る竹のナイフをアメク竹研いで作ってやったら、「わしが作ってやるから」と言って、芭蕉糸を紡いだ本物もってきてくれたらしいですよ。またアカカナジャーは、この婆さんと魚捕りにいったようですな。この婆さんは、海に行っても潮の満干が分からない。潮の満ったとき、海の中を歩いても一つも濡れていない。その代わり魚はたくさん採りよったらしいですよ。それで、婆さんと一緒に歩いて、魚も採らして、アカカナジャーがいつでも婆さんに、「テーアチャー(蛸)は危ないことだから、わしにぶっかけるな」と頼みよったですよ。婆さんは、「もう魚捕りも疲れるから、一度蛸をぶっつけてみよう」と思って、シライワとってもうアカカナジャーにかぶせたそうですよ。そしたら、アカカナジャーは逃げておらなくなったらしいですよ。それで、婆さんが家に帰って、このナートゥですな、こっちにナートゥいっぱいありますでしょ。こっち追うてですな、あれが畑(はる)から来ると、そのうちにアカカナジャーが、家に来て尖らした竹で、寝かしてある子供らの目を抜いて死なせてあったと言いますよ。そんな話をお母さんから聞いたことあります。
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