平良カマトさん(大宜味村屋古)
平良カマトさんは、1896年4月9日に生まれました。聞き手は、沖縄県口承文芸学術調査団の呉屋さんと遠藤庄治さん、1974年8月2日の記録です。
【しまくとぅば】
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【語りの梗概】
もうこれも茶のみ話の一つですよ。大層貧乏者の夫婦が火だけの正月を迎えていたと。そこに、旅の人がいらっしゃって、「どうか家を貸して下さい。宿を貸して下さい。」とその貧乏者の家に行ったら、「いいえ、私達の家は狭くて貸すことができません。そこに大きな家がありますから、そちらへいらして下さい。」と言ったので、そこへ行ったら、またその大きな家の人は貸してくれなかった。それで、その人はまた、その貧乏者の家に帰ってきて、「もうそこも貸さないと言われたので、あなたの家に来たのですが。」「私達はもう貧乏なので、火でお正月を迎えているのですよ。」と言ったら、「私が火でもって何でもしますよ。」と簪のかぶ一杯分の米を入れたら鍋一杯分になり、肉もかぶの一杯入れたら、鍋の一杯になった。またお湯を沸かして、「あなた方は風呂に入って若返りたいですか。」と聞いたら、「はい、入って若返りたいです。」と言ったので、「若返らせてあげようね。」と言った。本当にその夫婦は若返っていたんだと。するとまた隣の金持ちの人が、「なぜ、あんた達は、こんなに若返ってしまったのか。」と聞いたので、「夕べ泊めてくれとおっしゃる人がいらして、肉やら何やらお持ち下さって、米も持っていらして、大変御馳走になった上に、ああやって風呂にまで入れて下さって、それで私達は若返ったのですよ。」と言った。すると金持ちが、「それじゃ、その人はどこへ行ったのか。」と聞いたので、「はい、もう前へ行かれました。」と言うと、「呼び戻せませんか。」と言って呼び戻してきて、「どうか、私達も浴びさせて下さい。」とねだってそう頼んだら、その人たちはみな猿になってしまったんだと。その猿たちは、もう染め物屋だったらしいけど、焼かれた瓦の上に座ったので、尻を全部やけどしてしまい、尻禿げ猿になったということだよ。