宮城マツさん(大宜味村塩屋)
宮城マツさんは、1905年2月3日に大宜味村塩屋に生まれました。聞き手は、島元要さん、平良安子さん、照屋寛信さん、1983年3月5日の記録です。
【しまくとぅば】
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【語りの梗概】
あるところに、ここには金持ちと貧乏者がいらっしゃったからね。この旅人がよ、通ったときにね、そのころは乗りものもなくて、もう歩いて旅をするので、もう日が暮れてね。それで、この金持ちの家に、金持ちの家に行って、「今日は、私を一晩ここに泊めてください。」と言ったらよ、金持ちは、「正月だというのに人を泊めてはいけないぞ。」と言ったからね。このまたこの旅人は、「私達の家には泊めないよ。」と金持ちに言われてね。また、貧乏者の家へ行ってからこの貧乏者の家へ行って、もう私は旅の者でございますが、今日一晩この家に泊めてください。」と言ったからよ、貧乏者は、「私達は正月ではございますが、食べものも何もありません。貧乏で、ただまきを折って火正月をしているんですよ。そうですから、それでもよろしければ、それならお泊まりになってください。」と言ったら、「それでもよろしいですよ。」と言って、この旅人は、この貧乏者の家へ行って、「それじゃあ私達は火正月をしようね。」と言ってよ、薪を折って火正月をしながら、とうとう話をして、もう夜どおし話をして夜明け方になったので、「さあ、私はもうまた旅にでますから、あなた方が一番欲しいものは何ですか。」と言ったからよ、「私達は、もし若くなったら、子どももできるし、またお金ももうけられますから、お金をもらうより、それでもう若くなった方が私達はいいです。」と答えたんだ。旅人は、「そうか、それなら、お前達が毎日水を飲んでいる井戸へ行って、人の起きないうちにすぐ朝早く井戸へ行って水を汲んできたらね、そしたら、この水でご飯を炊いたら、ギーファのハブの一杯の水を入れるとすぐ一升のご飯が炊けるよ。また、これで顔を洗えば若くなってね、これでお茶を沸かして飲めば心も大変、すぐきれいに若い気持ちになる。だから、人の起きないうちに、早く水を汲んでくるんだよ。水を汲んできてこの初水を汲んできて使いなさいよ。」と言ったから、それで、「はい。」と答えて、この旅人の言うように水をくんできたからね、旅人は、「私はね、普通の人間ではないよ。私は神様のお使いだから、私はもう行くから、だから、お前達は私が言ったとおりにしなさいよ。」と言ったんだな。早速この旅人は、もう旅に出て行ったので、この夫婦は、いつも水を飲んでいる井戸へ行って水を汲んできてね、「これでまたキーファのハブの一杯の水を入れたら、またご飯は釜のいっぱいになるから。これでお茶をわかしたら味も良くて、顔を洗ったりいろいろやったら、すぐ若くなって、またお茶を沸かしたらすぐ心もきれいになって、大変ほがらかになってね、立派になるよ。」と言ったので、この人の言うとおりにしたんだ。また、夜が明けたらもう立派に若くなって、金持ちの家にあいさつに行ったわけ。そして、この金持ちの家へ行ったら、この金持ちの家の人が、「どうしてお前達はこんなに若くなっているんだ。きれいになったんだ。お前達は、どうして、もう急にこんなに立派に、若くなったのか。」と聞いたら、「昨日の夜、旅の方がいらっしゃって、この旅の方が、『人の起きないうちに初水をくんできて、正月の日は水を汲んできて、これでこうこうしなさいよ。何でもお茶も沸かして飲みなさいよ。これで顔も洗いなさい。これでご飯も炊きなさい。すぐいっぱいになるよ。』と言われてね。それでこの旅の方の言うのを聞いて、それで私達はこうなったんだよ。」と答えたんだ。「じゃあ、この旅の方は、それならどこへ行ったのか。」と聞いたら、「こうして、この道を通って行ったよ。」と言ったらよ、「それじゃあ、まだ呼び戻すことができるか。」と聞いたら、「ええ、まだ追って行ったら呼び戻せるよ。」と言ったので、この金持ちの家の人達は、またこのお使いの旅の人を呼びに行ったわけさ。呼びに行って、「私もあのように若がえらせてください。」と言ったら、「うん、それなら明日の朝はね、お前達は、朝早く起きて、朝人の起きないうちに行って、このいつも水をいつも水を汲んで飲んでい井戸へ行って、この水でご飯を炊いて食べたり、またお茶を飲んだり、また顔を洗ったり浴びたりしたら、とても若くなるからそうしなさいよ。」と言い聞かせたら、「それなら、そういたします。」と言ったらね。その翌日はまたこの神様の使いの人も帰ったので、この人は、この神様が言うことを聞いたのでとうとうここの家族の人達はみんな犬になったり猿になって動物になってよ、ここの主人は猿になってよ。そしたら、ここに神様の使いの人が貧乏者の家へ行って、「さあ、あそこは、みんな動物になってしまったから、この財産はお前達のものになるから、お前達がこの財産、この家をとりなさい。財産はお前達のものになるんだよ。」と言ったんだ。そしたら、このまた金持ちの家の主人は猿になってね。ここの女どもは、猿の子どもになったり、犬や猫になったんだな。猿になったら、金持ちの家の門口にはね、この石があるけどよ。この石に座ってよ、「おい、私達の財産を返せ、返せ。」と、ここにいつも来るらしい。それで、貧乏の家の人に、「それなら、この石の下から火を燃やして、石を焼いてからね、猿がきたら、おいでと言いながら、この火は燃やしておきなさいよ。」と言ったからよ、この猿がここからまた何となくここにきて座ったらお尻を焼いてね、お尻が真っ赤になってよ。それで、そのときから猿は来なくなったんだ。このときからお尻はね、猿のお尻は真っ赤になったんだって。また初水はね、このときから、ずっとこうして若水のこの由来記(ゆらいき)は、こういうふうになってるんだって。正月の日にはここでもずっと若水(わかみず)だといって汲むんだよ。人の起きないうちに、朝早く暗くなったころにね。もう今は水道から、自分達の家で、水道が入っているでしょう。もう昔はね、私達が生徒のころはね、この水道のできない前は、必ず兼久井戸(かねくがー)にランプを持って行ってからよ、三時から起きて水を汲んだものだよ。すぐ、また隣の人に、「さあ、私達も水を汲みに行くときには、私達にも知らせなさいよ。」と、隣近所でみんな教えあってね。