沖縄伝承話データベース

根保加那七さんの語り

マチガ―ワラビ 松川童(しまくとぅば)

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【語りの梗概】

ある男が、鍬を打っているとき、そばからアシタビが通ったって。アシタビは男に、「わしが首里城へ行ってここへ戻ってくるまでに、お前は鍬を何回打ったか数えておけよ」と言いつけた。男は、言いつけどおり、鍬を打ちながら数えていたんだね。そこへ、男の一番上の子供が昼食の支度をしてきて、「スー、昼ごはんを食べて下さい」と声をかけた。男は子供に返事するっていってこの数えた分みんな忘れてしまって。そこへアシタビが戻ってきて、「お前は、いいつけたどおり数えたか」って。もう忘れてしまってるから、親は返答できない。子供が、「はい、数えました」と。「はい、いくつか」「それなら、あなたたちが内間の入口からここまで、何十回、馬にムチを打ち鳴らしてこられたか、これを数えてあるなら、私のスーの分もお答えいたします」と答えたって。アシタビはもう自分のものは数えてないから、この子が勝っているわけさ。そうしたから、この子供は神だと言って、「部落はどこか、名前はなんというか」と子供の家も聞いてね。翌日、三名でお菓子も買って、我如古(がねこ)にあるその子の家へ行ったそうだ。そしたら、この子供一人いたって。「スーはどこに行かれたか」「ユンヌミ(夜の目)を取りに行きました」「何(ぬー)やが、童(わらび)、ユンヌミというのは何か」「あなたたちはアシタビをしておられる方が、これも分からないんですか。私をばかにしているんですか」「そんなつもりではないよ。分からないから聞くんだよ」「夜の目であるトゥブシ(松明)を取りに行かれました」それを聞いたアシタビは、「はあ」と言って、頭をふったって。また、「アンマーはどこに行かれたか」と聞くと、「去年蒔いたのを刈りに行きました」「なんだ、去年まいたというのは」「稲麦ですよ。これは去年の八月の彼岸(ひがん)の時期にまいたから、それで去年まいたのを刈りにと、答えたんです」ちょうど去年の八月の彼岸の時期に蒔いたから、翌年の二月、三月には刈ることができるでしょう。そえからまた三人のうちの一人が、「お菓子を食べなさい」と子供にあげて、ほかの二人にもお菓子をあげたって。そうしたら、「どの人のあげたお菓子がおいしいか」と聞くと、子供は、このお菓子は置いて、タッ、タッ、タッって手を鳴らして言ったそうだ。「先に鳴らした音が大きいか、中に鳴らしたのが大きいか」「同じように鳴った」って言ったから、「同じようにおいしかった」って答えたって。それから、その子供は、この我如古から今の宜野湾神山部落に移ってね、そこの神として祀られているって。ふつうの人だったらあんなにはできない、この子は神だと言ってね。この子供の名はマチガーワラビ(松川童)と言ってたよ。

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