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【語りの梗概】
貧乏者が、畑の行ち戻いするときに石を運んできて、自分の石垣に積んであったそうだ。その石垣の中にね、黄金石、宝の石が一個あったそうだ。だけど、貧乏者には運がないから、ただの石としか思わないだろう。隣の金持がこれ見て、「あそこに黄金石があるがね、あれ欲しいな」と思っているけど、人の石垣まで壊して取れないだろう。それで、金持は、貧乏者の家に行ったそうだ。行って、「一年分の米と、あんたの石垣と換えようか」と言ったそうだ。この金持の人は財産家だから、田もあって米もあったわけさ。貧乏の人はね、「あんた方は、金持ちになったら、この私の家が貧乏だとばかにしているのか」と、もう目もキョロキョロさせて、顔も赤くして、今にも手を出そうというほどしゃくにさわったそうだ。それで、金持は事情を話した。「私はね、この石垣の石が入り用だけど、あんたが難儀して持って来た石をただではもらえないからな。それで、米と換えるんだよ」と言ったらね、貧乏者も納得したわけさ。納得して、「あぁ、そうであるなら、換えましょうね」と。来年植える米の種をムンチャニというがね。金持が、「あんたにみんなムンチャニをやってしまったら、来年植える米がないから、一俵は取ろうね」と言うたら、貧乏者も、「あぁ、はい、はい」と言ったそうだ。貧乏者も、そのときから運が入っていたんだろう。「あんなに難儀くんじして運んできたから、石を全部あんたにやるのはもったいないから、私も一個取りましょうね」と言うたそうだ。そして、まるで神様が手でも引くようによ、石垣のところに行ったそうだよ。行ってね、黄金石つかまえて、取ってしまったそうだ。それで、金持は残念そうに体もしぼんで、貧乏者に、「あんたが持っている石は、本当の石だと思っているの」って、言ったそうだ。「うぅん。これは、石なんだよ」って貧乏者が言ったと同時に、石がピカピカピカって光り輝いたそうだ。それで、金持が、「もう、石もいらないから、いいよ。」って言ったら、貧乏者も言ったわけさ。「米は返しましょう。」「これは、男と男の約束だからね、米はみんなあげる」って、金持が言ったがね、貧乏者は、「全部取ったらいけないから、半分はあげましょうね。」と、米は半分にわけたそうだ。だから、人間はね、徳が入らない限りね、いくらあせっても金はたまらないそうだ。