韓国のおばあさんの語り

フランシス・カーペンター 著|中西康貴・樋口淳 訳|定価980円

これは、アメリカの作家であり、写真家でもあるフランシス・カーペンター(1890-1972)が、韓国が解放された直後の1947年に出版した民話集で、朝鮮王朝末期(大韓帝国時代)の改革者であった金弘集の母親が、二人の孫に語る形式で、32話の民話が収められています。

フランシス・カーペンターは、父である旅行家のフランク・カーペンターの撮影助手として少女時代から付き添い、世界中を旅して、その知見をアメリカの人々に伝え続けて来ました。

フランシスはまた、1920年に外交官であったチェイピン・ハンティントンと結婚すると、今度は夫とともに世界を旅することになります。

彼女は、多くの写真記録や著作を残しましたが、なかでも「おばあさんのお話シリーズ」はよく知られています。

このシリーズには、1930年の「バスク地方のおばあさん」、1933年の「ロシアのおばあさん」、1937年の「中国のおばあさん」、1940年の「スイスのおばあさん」、そして1947年の「韓国のおばあさん」と続きます。

この「おばあさん・シリーズ」は、その後「ふしぎな話・シリーズ」に受け継がれ、馬や犬や猫や象のような動物や海洋の不思議話に及び、舞台は東アジアからアフリカや南アメリカに広がり、生涯の終わりに近い1972年には、日本を訪れて「アイヌの民話」を残します。

フランシス・カーペンターは、けっして組織的で学術的な調査試みたわけではありませんが、残された膨大な著作の、世界のいたるところで得た見聞が示された情報の豊かさには圧倒されてしまいます。

私たちがここに紹介する『韓国のおばあさんの語り』も、けっして体系的なものではありませんが、フランシスが見聞したに違いない韓国・朝鮮の人々の暮しが、きわめて詳細に、正確に描き込まれています。