フランス民話の森

樋口淳・樋口仁枝 編訳|樋口淳解説|定価 980円

1812年にヤコブとウイルヘルムのグリム兄弟が「子どもと家庭のためのメルヘン(グリム童話集)」を刊行し、その後、とくに弟のウイルヘルムの努力で1857年の第7版まで版を重ねるうちに、それまでドイツを中心にしたゲルマン民族に固有のものだと考えられていた民話が、ゲルマン民族の枠組みを越えて、ヨーロッパ中に広く分布すること、さらには中近東やインドをはじめ世界中に広がることが明かになりました。

その結果、語り手を訪ねて民話の語りを記録しようという運動がヨーロッパ各地におこり、19世紀半ば以降にはフランスでも各地に優れた民話の聞き取り記録が誕生しました。

本書は、まず20世紀初頭にフィンランドのアンチ・アアルネの手によって始められた動物民話・本格民話・笑話・形式譚という4つのカテゴリーからなる「民話の話型カタログ」の基準にそって、フランスの代表的な民話の語りを収めています。

そしてさらに、ペロー民話集の「赤ずきん」「シンデレラ」「長靴をはいた猫」など11話の話の原形となるフランス各地の語りを整理し、解説を加えています。

ペロー民話集の誕生は1690年代、民話の語りの記録は19世紀以降ですから時間が逆転していますが、人々の伝承の語りの多くは、17世紀をはるかに遡る可能性があります。

ヴェルサイユの宮廷人向けに用意されたペロー民話集の語り口の背後に潜む、民衆の語りの魅力を確かめて見て下さい。