サンタクロース伝説の誕生
コレット・メシャン 著、樋口淳・諸岡安江 訳|原書房|定価2,800円
まっ赤なコートにまっ赤なズボン、まっ白なヒゲをはやしてトナカイのひく橇に乗ってクリスマスにやってくるサンタクロースのことなら、世界中の大人も子どももしっています。
でも、そのサンタクロースが、現在のトルコ領のミュラ(ギリシャの植民都市)の司教だったことは、あまり知られていません。
この聖人(聖ニコラウス)に対する信仰は、まずイタリア南部の港町バーりに移り、さらにフランスのロレーヌ地方のサン・ニコラ・ド・ポールに伝わったと考えられます。
そして、ライン河をくだってオランダにやってくると、「シンタークラース」 と呼ばれて、人々に親しまれるようになりました。
さらに大西洋をわたりアメリカ大陸に向い、オランダ移民が多く住むニュー・アムステルダム(現・ニューヨーク)に定着して、現在の「サンタクロース」になったのです。
本来、サンタクロースはキリスト教の司教ですから、その祝日はクリスマス(キリスト降誕の祝日)より少し早い12月6日で、ヨーロッパのキリスト教国では、子どもたちは12月6日にプレゼントをもらうのが一般でした。
それがいつの間にか、デパートのキャンペーンに乗って、12月24日の夜になってしまったのです
しかし、もう少し深く考えてみると、サンタクロースのルーツはキリスト教以前にまで遡ります。
むかしからヨーロッパの冬には、サンタクロースにかぎらず、たくさんの不思議な存在が村や町の家々を訪れて、人々に祝福を与え、素朴な贈り物をもたらしてきたのです。
このサンタクロースの姿は、日本の正月に「お年玉」を携えてやってくる、歳神さまにも似ています。
この本の著者のメシャンは、ヨーロッパ人ですから、こんな日本の新年のありさまを知るよしもありません。
しかし、そのかわり、私たち日本人があまり知らないヨーロッパの冬の生活を、生き生きと描き、私たちに新年を迎えるヨーロッパの様子を分かりやすく伝えてくれます。